【全日本女子選手権】「3度目の正直」のはずが、予選敗退の丸岡ラックFP高尾「フットサルを楽しむことができませんでした」

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大会2日目を終え、ミックスゾーンでメディア対応をしているとき、アリーナからはFIFAアンセムが流れてきた。翌日に行われる決勝戦に向けて、リハーサルが行われていたのだ。そのメロディーが耳に届くと、ひとしきり泣いたはずのFP高尾茜利の目に、再び涙が溢れた。

 

「もう、この歌、聞きたくない」

 

高尾の所属する福井丸岡ラック(北信越/福井)は、昨年大会まで2年連続準優勝で全日本選手権を終えていた。「3度目の正直だと思っていたんですけどね」と、高尾は苦笑したが、実際に丸岡ラックは大会前から優勝の有力候補にも挙がっていた。ところが、グループDを突破する大本命と見られていた丸岡ラックは、大会初戦でFCアレグリ・カミーニョ(九州/佐賀県)に0-2で敗れてしまう。翌29日の第2節で道楽(四国/香川県)に6-0で大勝し、第3節でもユニアオレディース(東海2/愛知県)に3-2で競り勝った。だが、2勝1敗で上位3チームが並ぶと、当該チームの成績によってグループ3位となり、決勝ラウンドに進むこともできなかった。

 

早過ぎる敗退について、高尾は「すごい悔しいですが、自分たちの初戦の入り方が……。もとから課題だったのですが、やっぱりこういう大きい舞台で、そういうのを出してしまうのは、まだまだ自分たちが足りないということ。そこに関して、こうやっていればとか思うことはたくさんあって、すごく悔しいですが、それが今の自分たちの実力と受け止めて、来年は絶対に日本一を目指してやりたいです」と、大会初日の試合を悔やんだ。

 

そのFCアレグリ・カミーニョ戦、丸岡ラックは完全に分析されていた。本来は攻撃的なプレーを得意とするFP古賀咲子も守備に徹して、丸岡ラックの長所を消し続け、少ないチャンスにかけた。高尾の突破力、FP北川夏奈の最前線での強さ、FP五十嵐愛海とFP田中悠香の強力なシュートといった個の力を出し切れずに、チームとしても生かせなかった。

 

相手が自分たちを分析してきた。そのことを、必要以上に意識してしまったと高尾は反省する。「すごい研究されていたというのはありました。相手の監督が、すごく自分たちを研究していたことを口に出していたんです。私たちは、それを聞かずに戦えばよかったのですが、それを気にし過ぎてしまいました。『自分たちは研究されている』って思ってしまって、すごくネガティブになったというか、いつものラックらしく、フットサルを楽しむことができませんでした。自分も何とか頑張ろうと思ったし、なんとかみんなを励まそうと頑張ったのですが、それもできず、自分のプレーも発揮できずで…」。

 

ベンチから相手の監督が発していた声が、プレーの選択肢を一つ、また一つと消して行った。この試合の丸岡ラックには、自分たちの戦いができないときに流れを再び引き寄せる力も、相手の攻撃に耐える力もなかった。

 

宿舎に戻った彼女たちは、かつてないほど話し合い、気持ちを切り替えて2戦目に臨もうと誓った。実際、北海きたえーるに到着したとき、彼女たちは歌を歌いながら、まるでこの日が大会初日のようにロッカー入りしていった。そして前述のように、2日目は2連勝を収めたのだが、当然、初日の結果が覆ったわけではなかった。

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「昨日の夜は、ずっとチームでミーティングをして、選手ミーティングをして、『切り替えよう』と話して、すごく良い形で1試合目を迎えて、勝つことができました。でも、やっぱり2日目からでは、足りないですよね。しっかり大会を戦っていく上で、初戦が大事ということはわかっていたのですが、その試合を戦いきれずに、悔しいです」

 

第3戦のユニアオレディース戦は、32対9というシュート数が示すように、圧倒的に攻め立てた。決定的な場面を何度もつくり出して、決勝ラウンド進出のために必要な3点のリードをつかもうとした。だが、GK上杉舞の好守だけでなく、バーやポストにも阻まれ、ゴールが遠かった。「本当にチャンスはたくさんあって、あとは決めるだけだったんですけど、それが届かなかったのも実力です」と、高尾は声を落とした。

 

悲願の初タイトルは、またもお預けとなった。現在、高校3年生の高尾は、冬には受験を控えている。今後も丸岡ラックでフットサルを続けるためにも、福井の大学を受験するという。「授業が終わってからも、学校に残って受験勉強して、速攻で帰って、すぐに練習するっていう生活です」。FIFAアンセムが流れて来たのは、そんな話をしていたときだった。

 

決勝を前に、自分たちが入場しながら聞くはずだったFIFAアンセムを、思わぬ形で耳にすることになった高尾は、「決勝までしっかり見ていきます。来年に向けてのイメージトレーニングです」と、声を震わせながらも懸命に前を向いた。

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