アジア選手権

【管理人日記】2003年8月5日、日本がイランで戦ったAFCフットサル選手権の記憶

2大会連続準優勝に終わった日本代表。それでもこの大会で得た経験は大きかった

フットサル日本代表は現在、イラン遠征を行っている。イランは過去に15回開催されたAFCフットサル選手権で12回優勝しているアジアの絶対的な王者だ。2016年にコロンビアで開催されたフットサルW杯では、ブラジルを破ってベスト4進出を果たし、アジア最高位となる3位にまでのぼりつめた。イランサッカー協会は、「世界一を目指すのであれば、サッカーよりもフットサルの方が狙いやすい」と考え、フットサルにサッカーと同等、もしくはそれ以上の投資をしているという。

イスラム教国家であるイランは、お酒を飲むこともできずに娯楽が少ない。その中でスポーツは、彼らにとって非常に重要な楽しみであり、代表の活躍は経済制裁を受けている国の国民にとって、極めて大きく重要な意味を持つ。

今回、イラン遠征が実施されると知ったとき、なんとしても現地に行きたいと思ったのだが、残念ながらそれは叶わなかった。その話をすると愚痴になるのでここでは割愛するが、日本代表の活動を追うメディアがゼロなのは、非常に寂しい状況だ。

現地に行きたい。そう思ったのは、2003年の強烈な記憶があるからだ。少し長くなるが、当時のフットサル日本代表の状況に触れておこう。

1999年に第1回大会が行われたAFCフットサル選手権は、この当時、毎年開催されていた。2002年のインドネシア大会で初めて決勝進出を果たした日本代表は、初優勝を目指して2003年のイラン大会に臨んでいた。

このときの日本代表を率いていたのは、原田理人監督。そしてサッカー日本代表のジーコ氏の推薦を受け、チームのテクニカルディレクターに元フットサルブラジル代表選手だったセルジオ・サッポ氏(この大会後に監督に就任)が加わっていた。

選手では、ブラジルでプロ経験のあったFP市原誉昭がキャプテンを務め、今は解説者としても活躍するFP藤井健太、FP相根澄、FP前田喜史、日本代表最高GK川原永光、フットサル女子日本代表の監督を務める木暮賢一郎、そして今も現役Fリーガー(!!)のFP金山友紀らが顔を並べた。

フットサル選手とJリーガーのアスリートとしての能力に大きな差があったこともあり、FP鈴村拓也、FP清野乙彦、FP渡辺淳一といった元Jリーガーがいることも、このチームの特徴だ。

前年の決勝ではベンチ外だった木暮。この後、長年日本を引っ張っていく存在となる

日本はクウェート、パレスチナ、マカオと同組だったグループステージを3戦全勝、23得点1失点という成績で勝ち上がり、決勝トーナメントでも、台湾に7-0と圧勝した後、タイを3-2で振り切り、2大会連続となる決勝進出を果たした。

決勝の対戦相手は、もちろんイランだ。

イランは、おそらくフットサル国際Aマッチの世界最多得点記録を持つであろうFPバヒド・シャムサイーが絶頂期にあり、本職は画家で左右のインサイドでボールを転がす独特のフェイントを得意としたFPモハメド・ヘイダリアンが、キャプテンマークを巻いていた。その強さは際立っており、グループステージではキルギスタンに101、レバノンに15-2、中国に1223連勝。準々決勝ではウズベキスタンを7-2、準決勝ではクウェートに10-2で破り、大会5連覇に向けて邁進していた。

200385日、日本とイランはテヘランにあるアザディ・スポーツ・コンプレックス内にあるアザディ・アリーナで開催された。このスポーツ施設内には、巨大なサッカー場もあり、その公式入場者数は約85000人なのだが、実際にW杯予選などの国際試合が行われると、10万人を超える観客がスタジアム内に入り込んでしまう。冒頭に書いたように、イランでは娯楽が少なく、人々はイラン代表の試合を見るために会場に押し寄せるのだ。しかも、女性の観戦が禁じられるため、そのすべてが男という状況だ。

これと同じ現象が、フットサルの試合でも起きた。アザディ・アリーナの収容人数は12000人。座席が次々と埋まっていくが、入場口から入ってくる人の波が止まる気配はない。人々は当然の顔で次々と通路に座り込む。

試合開始の30分前にはすでに観客席と通路は見分けがつかなくなっていた。それでも会場の外には多くの人がいたため、一体どれくらいの人がいるのかを見に行こうとしたのだが、入り口にいたスタッフに「ダメだ」と止められた。不可解な顔をしていた僕の目の前で、ガシャンとドアが閉まり、大きなカギがかけられて、出入りが一切できなくなった。鉄格子のようなドアの外には、まだまだ数百人は観戦を望んでいるファンの姿があり、ある者は怒鳴り、ある者は泣き叫んでいた。

狂気的なエネルギーが渦巻いていたのは、会場の外だけではない。会場の中を埋め尽くした観衆は、誰もが「イーラーン、イラン!」と叫んでいた。試合後、大会の運営者に入場者数を聞いたところ、「12000人収容のアリーナに14000人を入れた」と言っていたが、通路が全く見えない状況だったから、もっと多くの人が入っていたはずだ。僕の把握している限り、日本から来ていたファン・サポーターは3名。現地に日本人がどれだけいたかはわからないが、日本を応援している人は50人もいなかっただろう。

イラン一色のスタンドと国歌を歌う日本代表選手たち。キャパシティ以上の観客が入り、通路は一切見えない状況になった

試合が始まると、お祭り騒ぎになった。

会場の雰囲気に飲まれていたこともあるだろうが、立ち上がりハーフから守ることを選択した日本は、開始50秒で先制されると、前半4分までに3点を決められた。早くも優勝を確信したアリーナが、まるで一つの大きな生き物のように歌い、叫び、揺れた。

日本はタイムアウトを取り、前線からプレスをかける守備に変更する。この策が功を奏し、イランの攻撃を食い止めた日本は、FP難波田治が1点を返して前半を1-3で折り返した。

流れが変わりつつあった後半の立ち上がり、日本は攻めた。しかし自分たちのCKとなるはずのボールがゴールクリアランスと判定され、ロングカウンターを受ける。日本は攻め残っていたシャムサイーに対応しきれず、GK川原と難波田が交錯してしまう。ゴール前でフリーになったイランのエースは、ボールをゴールライン上で丁寧に止めて頭でボールを流し込んだ。日本にとっては屈辱的なゴールだが、シャムサイーのパフォーマンスに会場は勢いを取り戻す。

それでも日本は飲まれなかった。CKから鈴村がゴールを決めて再び2点差とすると、その後も高い位置でボールを奪い取り、イランのゴールに迫り続ける。予期していなかった自国の劣勢に、アリーナの雰囲気は変わる。

日本は攻撃でも、守備でもアグレッシブだった。そのためファウルも多く取られた。後半10分には、第2PKスポットの前で6つ目のファウルをしてしまい、壁なしFKから追加点を決められる。しかし、その後5度あった第2PKは、ことごとく川原が止めた。

2PK以外にチャンスをつくれなかったイランに対し、日本はセットプレーから前田がゴールを決めると、市原も流れの中から追加点を挙げて、4-5と1点差まで詰め寄る。

それまで4度のアジア選手権決勝のスコアは、9-1、4-1、9-0、6-0。イランは常に他者を圧倒してアジア王者になってきた。その後、しばらくイランと日本の2強時代が続いたが、このとき初めて日本はイランに「ライバル」と認められたのだろう。

川原、鈴村を中心に、イランの攻撃をほぼ完璧に抑えていた日本だったが、最後の最後にシャムサイーにゴールを決められる。得点後も、それほど喜ばないイランのゴールマシンが、両手を天に突き上げて神に感謝した姿は、どれだけ日本が彼らを苦しめたかの証明だった。

イラン最高のフットサル選手バヒド・シャムサイー。彼と鈴村拓也のマッチアップは、アジア選手権名物

最終スコアは4-6。前年の0-6の大敗から大きく前進した日本は、この2年後にイランから初勝利を挙げ、3年後に悲願のアジア制覇を成し遂げる。

僕は2002年大会から通算9大会、アジア選手権を取材してきたが、ここまで「どアウェー」の環境で取材をしたことはない。日本が1点差に詰め寄ったときのスタンドの静寂、そして歓喜に湧き上がる日本ベンチ。それまで余裕の表情を見せていたスタンドはいきなり牙をむき、ピッチ脇で撮影していた僕と勝又寛晃カメラマンは、コイン、石、枝、オレンジジュースの入ったペットボトルなどを投げつけられた。このときを思い起こすと、興奮からか、恐怖からか、15年が経った今、あらためて原稿を書いていても鳥肌が立つほどだ。

イランは毎回、AFCフットサル選手権の開催国に立候補している。しかし、この大会以降、AFCフットサル選手権はイランで開催されていない。女性の観戦が難しいこと、入国審査が簡単ではないこと、AFC役員が難色を示していることなどなど、複数の理由があるとされており、今後もイラン開催の大会は多くないだろう。それだけにイランで行われる大会、敵地でのイラン戦というのは大きな意味を持っている。

ブルーノ・ガルシア監督は今大会を前に、「アジアチャンピオンで、強豪であるイランと相手のホームで、アウェー扱いされるという厳しい状況で、どれだけのことをやれるか。非常に大きなチャレンジが待っていると考えています」と、イラン戦の重要性を説いていた。

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当初、日本vsイランの試合は大会最終日に組み込まれていたが、開催地がテヘランから600キロ離れたタブリーズであり、日本の移動を考慮した結果、24日に移された。2日後にはベラルーシ戦があるものの、まずこの試合で力を出し切り、敵地では初となるイランからの勝利を持ち帰ってほしい。

苦しみながらも、大会5連覇を成し遂げたイラン。日本が決勝でイランを破るのは11年後のベトナム大会

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