【Fリーグ】ラストプレーで勝ち点2を取りこぼした町田、浦安は健介体制で初の勝ち点獲得

[2017.6.18 Fリーグ2017/2018第2節 浦安 2-2 町田 浦安 956人]

『ああ、これで試合が決まったな』。

町田のFP中井健介がボールを持ったとき、そう思った。おそらく、ファインダー越しに見えていた、1階席に陣取っていた黄色いユニフォームを着たサポーターも、僕と同じように感じていたはずだ。

試合時間は残り5秒を切っていた。前半、主導権を握っていたペスカドーラ町田は、5分にFP森岡薫が相手のミスを逃さず、カウンターをゴールに結びつけて先制する。さらに10分にも流れるようなパスワークからFP金山友紀が追加点を挙げてリードを広げていた。

ところが後半に入ると流れが一変。開幕戦から60分以上にわたってノーゴールが続いていたバルドラール浦安の反撃を受ける。後半12分にはFP星翔太にGKイゴールの股下を抜くゴールを決められて、1点差に詰め寄られた。それでも、その後はFP日根野谷建の顔面ブロックなど、体を張った守備もあり、浦安に同点ゴールを許していなかった。

そして残り5秒を迎える。浦安のパワープレーを凌いだ町田は、自陣からカウンターを仕掛ける。ボールを保持していたのは、スピードに定評のある中井だ。無人のゴールにボールを蹴りこむか、縦にボールを運べば、試合は終了だった。

ところが、この場面で中井は対応しようとしたFPディドゥダを、完全にはがそうとして、中央にボールを運ぼうとする。そこには、まだ試合をあきらめていない男が、全力疾走で戻ってきていた。浦安の日本代表FP加藤竜馬だ。

「(中井に)打たれていたら、終わっていましたね」。そう認めた加藤は、「匂いがした」と語る。

シュートを打たれたら、間に合わない。そんな絶体絶命の局面でも、加藤はあきらめずに守備に戻った。そして中井からボールを奪うと、ボールを短く運び、右サイドに攻め残っていた星にパスを送る。星がゴール前に折り返したボールを、FP野村啓介がヘッドでゴールに突き刺す。ホーム開幕戦、残り1秒での起死回生の同点ゴールに浦安体育館は沸き上がった。

「ちょっと追いかけた瞬間に、なんとなく雰囲気的に『これは持ちそうだな』と感じたんですよね。なんでかはわからないんですけど。シュートを打たれたり、ドリブルで縦に行かれていたら終わっていたんですけど、中に行くんじゃないかなという予感というか、ボールを持ちそうな匂いがしました。そこでしっかり戻って、ボールを取れて、ブザービート気味に点が入った。ここで負けるのと引き分けるのでは、まったく違いますし、この勝ち点1を次につなげたいですね」(加藤竜馬)

ホームチームが喜びに沸く一方、アウェーチームは悲哀に暮れた。試合後、町田のロッカールームでは森岡が怒りに震え、イゴールはタイトルを逃したかのように人目をはばからず号泣したという。外国籍の助っ人選手として、勝利できなかった試合では、真っ先にその責任を問われる立場を経験してきた彼らは、この試合を勝ち切れなかったことが理解できなかった。

暗く沈むロッカールームを出て、ミックスゾーンに現れた中井は、「完全に僕の判断ミスです」と、唇を噛んだ。

「目の前に一人いたので、そこをかわそうとしました。後ろからもう一人、迫ってきている選手(加藤竜馬)は見えていませんでした。残り時間、場所、相手が来ているか来ていないか。それらが判断できていれば、なんでもなかったシーンだったのに…。相手が来ているのも、見えるはずというか、見えないといけなかったのですが、竜馬が見えていなかったのが一番大きいです。ボールを取って、前に運んだ瞬間に『もう来ていないだろう』と思ってしまった。完全に僕の判断ミスです」(中井健介)

両チームが試合後に得たのは同じ勝ち点「1」だが、その意味合いはまったく違う。こうした甘さをなくしていかない限り、町田はリーグタイトルを獲るのは難しいだろう。それはメディアの選ぶ2016-17シーズンのベスト5に選出され、更なる飛躍が期待されている中井の日本代表入りについても同じだ。逆に加藤が代表に選ばれ続けているのは、こうした結果を引き寄せるプレーができるからと言うこともできるだろう。

いずれにせよ、リーグ戦はまだ始まったばかり。あきらめずに「ゼロ」を「1」にした浦安と、不用意なミスで「3」を「1」にしてしまった町田。そして、そのチームの中心選手である加藤と中井が、どうなっていくかも注目だ。