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【AFC女子選手権2018】木暮賢一郎監督メンバー選出記者会見《後編》 目指すフットサルについて「多く点を取る攻撃的なスタイルを出して、貫いて、なおかつタイトルを獲りたい」

日本サッカー協会は16日、5月2日から12日にかけてタイのバンコクで開催される第2回AFCフットサル選手権タイ2018のフットサル女子日本代表メンバーの14名を発表した。会見に臨んだ木暮賢一郎監督にとっては、日本代表を率いてAFCの大会に出場するのは、今回が初めてのこととなる。約50分に及んだ記者会見と囲み取材の様子をテーマ別に前編と後編に分けてお届けする。

後編では、現役引退直前から目標であることを隠さなかった監督として日本代表を率いることが実現した木暮監督の心境から、目指すフットサルのスタイル、そのプレーモデルをどのように落とし込んでいくかの話を展開。「木暮賢一郎という、いちフットサル監督のカラーが出ることは間違いない」と、女子日本代表を自身の色に染め上げることを宣言している。

 

以下、囲み取材を含めた質疑応答でのコメント
――日本代表を率いて初めてAFC主催の大会に臨みます。木暮監督の個人的な心境は?
木暮 日本代表を率いるうえで男子も、女子もないと思っています。日本代表としてアジアで戦うことの重要性、責任は十分に理解しているつもりです。これまでいろいろなところで言っているように、自分の夢の一つとして代表監督はありましたし、そういう意味では非常に重要だと思います。ただ、個人の夢や目標を叶えるために、日本代表があるわけではありません。あくまで今、置かれている女子フットサル界、タイトルを獲ってほしいということと、ユースオリンピックにつなげてほしいとか、それを達成しなければいけません。
見て分かるように男子のスタッフを大量に登用しています。スタッフの男子化は、スペインもブラジルもポルトガルも、過去の強豪国が同じように男子のスタッフが女子を率いた経緯があることを、僕は理解しています。いろいろな背景の中で、そういう部分でも自分がオファーを受けて引き受けた以上は、それに応えることが一番大事だと思っています。自分の感情というよりは、もう少し広い視点で、まず結果を持ち帰れるようにと思っています。

――Fリーグができて11年が経ち、男子代表は結果が出せていません。女子も同じことが言えると思いますが、代表の強化という意味で足りないこととは?
木暮 何をもって強化とするかは考え方次第です。海外遠征を数多くすることも強化でしょうし、国内での代表活動の回数を増やすことも強化です。代表活動が少なくても、各クラブが良い取り組みをして、良い選手を輩出すれば、自然と日本代表の強化にもなります。
僕は、どういった取り組みがいいかという答えは一切ないと思っています。もちろん監督は多くを望みますから、海外遠征が多くでき、国内活動も多くて、リーグも良いクラブが増えるのが理想ですし、それがブラジルやスペインの環境ですよね。そうなることは大事ですが、現状でないものを言っていても仕方がないと思います。むしろ僕はその逆の発想で「(環境が)ないから、勝てない」ではなくて「(環境が)ないけど、勝った」というのが、次につながると思います。
シュライカー大阪の監督時代も、そういうマインドでやっていましたし、刈谷でベトナム代表とウズベキスタン代表と戦った男子の代表のときも、ラージリストに入れていた選手が10数名呼べない中で引き受けました。どこのクラブも名古屋オーシャンズには環境が違い過ぎて勝てないだろうという中で、多くの人の努力やそういう思いで勝つことができたことを経験しています。刈谷のときの日本代表も勝っています。女子代表でもないものをねだるのではなくて、ない中で結果を出して、なんとか良い方向に持って行くアクションをとっていきたいなと。それが自分のスタイルでもあると思っています。

――クラブと代表ではチームマネジメントやチームづくりは、何か違いますか?
木暮 まず一つ代表が短期決戦であることは間違いありません。選手と触れ合えるのは25日からAFCの最終日までの期間しかありません。ただ自分としては、クラブ、代表にかかわらず、最大限の準備をするスタンスは変わりません。
クラブであれば見るべきサイクルは1週間です。勝った、負けた、次の相手がどこで、どう修正して、事前に準備している最終的な目標に対して逆算をする。それが通常のスタートです。
しかし、代表では修正する時間は勝ちながらしかありません。自分の準備することは、どういうプレーモデルにして、どういうセットプレーをするのか。セットプレーの適正な数を見極めること、過負荷になってもよくないですし、少な過ぎてもいけません。相手がマンツーマンなのか、ゾーンなのか、プレス回避をしてくるのか、どういうシーンが一番多くなりそうかを分析して、適正な数、情報量、選手に合う合わないところも見極める必要があると思います。
対選手でいうと、日本代表選手とは言ってもアマチュア選手です。また初めて代表に来る選手も多いですから、日の丸を付けることの意義であったり、この短期間で必要なマインド設定をすることを、最初に伝える必要があると思っています。そういうことはしっかりやってほしいですし、日本代表としてフットサルに真摯に取り組む姿勢、日本代表を目指すために必要なこと、日本代表で戦う上で必要なこと、世界に出ていくために必要なこと。それらを代表チームでしっかり理解してもらい、ここで理解した選手たちがクラブに帰って「代表ではこうだった」ということを各チームで伝えてもらって『私もそこに行きたいな』、『目指したいな』というサイクルをつくっていきたい。それはかつての自分たち、日本代表の男子がFリーグができる前に行っていたようなサイクルであり、指導者や活動日数が少ないことを含めても、避けて通れない道だろうと思っています。逆に代表に来たからこそ、プレーの楽しさとか、やったことがないことをやる楽しさとか、コンペティションをする楽しさ、タイトルを獲る喜びだけではなく、日本の女子フットサル全体が、この代表に行ったから底上げされていく。選手とは、そんな接し方をしていかないといけないかなと思っています。
クラブでは、そういうことよりも、今年優勝するためにサラリーをクラブが支払っています。活躍すれば給料が上がったり、良いチームからオファーが来たりする。活躍しなければクビになるとか、メンバー外になるとか、若返りするとか、そういうことが頻繁に起こります。しかし、日本代表においては、このスパンにおいてそういうことが考慮されることは全くありません。全員が必要ですし、1分しか試合に出られなくても、必要だからこそここに来ているわけです。この活動で感じたことを体現してもらい、クラブに持ち帰ってもらうことも、今のアマチュアのこういう状況ですから、すごく必要だと思っています。ですから選手たちとの接し方は、代表とクラブではすごく変わるのかなと思います。
ただ、やるフットサルに関しては、監督が一緒ですから、基本的なコンセプトとか、フィロソフィー、狙い方、どういうフットサルをするか。それらが大きくモデルチェンジすることは、基本的にはないと思っています。
ただし今、話していることというのは、選手たちと触れ合っていないので、理想だけになってしまうかもしれません。自分が、どれだけ早く着地点を見つけられるか。僕が描いているプレーモデルとの理想と現実をいち早く見つけることが、優勝するためには必要だと思います。そこを見誤ってしまえば、良い結果は出ないと思います。そういう意味では25日から始まる合宿の1分、1秒を無駄なく過ごしたい。軌道修正することもあると想定していますし、その決断の速さと、どう軌道修正するかの方向付け。そこも自分が準備している部分ではあります。

――選手たちのポテンシャルをはかるのも25日からになるのですか?
木暮 ここまで試合、映像を見て、ポテンシャルは十分に確認しています。もちろん実際に手元におくことで多少の違いは出ると思いますが、少なくとも各選手が得意なプレーであるとか、彼女たちのストロングポイントについては十分に理解していますので、そこは彼女たちの良い所を引き出す作業とグループ全体としてプレーモデルを発揮する。その2つの部分を並行して落とし込んでいかないといけないと思います。

――木暮監督が目指す日本代表のスタイルというのは、どういうものでしょうか?
木暮 自分自身、女子を率いて戦うのは初めてですが、当然、過去の映像は見ています。日本の過去の順位、他国と比べてどこが優れていて、どこが足りないかを、ある程度は分析しています。過去の監督がやってきたやり方、自分自身も選手として日本代表で12年間、プレーしてきました。女子フットサル日本代表としての歴史、マインドの良いところは引き継いでいかないといけないと思っております。
ただ、今大会からは戦うフットサルのスタイルは、自分のカラーが思いっきり出ると思います。今までの日本がというよりは、自分の好きなスタイルは、攻撃的なフットサルですし、ここに来る前に4年間を過ごしたシュライカー大阪でも、オフェンシブな姿勢でタイトルを奪っています。そういう部分では、木暮賢一郎という、いちフットサル監督のカラーが出ることは間違いないと思っています。一番は「多く点を取る攻撃的なスタイル」というのが、わかりやすく出るのではないかと思います。それを出したいですし、そこを貫いて、なおかつタイトルをつかみたいと思います。

――イメージ的にはポゼッションしながら、主導権を握って攻めきる形ですか?
木暮 そうですね。攻撃、守備の両方において、積極的に自分たちがイニシアチブをとって、守備に関しては高い位置から1秒でも早く相手のボールを奪い返す。これは常々言っていますが、どんなときでも相手コートの10メートルよりも奥にボールが長くある状態をつくりたい。自分たちがディフェンスのときも、そのラインからなるべくボールを出さないようにする。自分たちがボールを持っているときは、なるべく早く相手コートの奥10メートルにボールを侵入させる。常に相手の危険なところに、ボール、人がある。そういう時間を長くすることが大事だと思っています。

――男子と女子では技術レベルやフィジカルも違います。プレーモデルを落とし込む際にシュライカー大阪でやっていたことが、そのままできないこともあるのでは?
木暮 技術的なものは当然、男子の方がレベルも高いです。しかし、うまくいけば男子よりも、女子の方が言うことは聞いてくれると思っています。背景として、普段は指導者がいないとか、まっさらに近い状態の選手も多いと思います。
男子であれば、過去にこういう監督とやっていて、自分のスタイルができあがっていて、なかなか新しいプレーモデルに対応できない選手もいます。女子の方がそういう部分では、うまく物事が進めば、素直にチャレンジしてみようということは多いのではないかといろいろな関係者とも話をして聞いています。そういう意味では、落とし込むのにかかる時間は早いのではないかな、と。数回やったタレントキャラバン、トリムカップでも女子選手を指導しましたが、「やろう」と言われたことをすごく素直にやってみるマインドがあると感じました。
技術的な面では、そういったプレーモデルをいつやるのか。状況を読むことなどは、培ってきた選手としての経験値、いろいろなシチュエーションを経験している選手の経験は当然、反映される部分です。そこは男子も圧倒的に多くの難しいゲームや国際舞台を経験している人が多いと思いますので、一長一短はあると思います。
ただ、どう選手たちに落とし込むかは、自分次第かなと。積極的になる背景は整っていると思いますし、選手を見てもらえばわかると思いますが、同一チームから多くの選手を呼んでいます。これは代表のメリットで、選ぶ側も日頃からのクラブ内でのコミュニケーションとか、連携面をポイントに見ています。人選的なものを含め、早くいかないとタイトルは取れないと思っているので、うまく行かせたいと思っています。

――優勝を争うライバルはどこになりますか?
木暮 昨年のインドア・ゲームズで日本は、タイに1-3で負けています。また2015年に開催された第1回AFC女子選手権では、決勝でイランに負けています。その現状がありますし、その2つの国はおそらくライバルになるでしょう。しかし、このグループは私とインドア・ゲームズを戦い「こういう結果が出て、良い成果があった」とか「改善するところがあった」という状態で、今大会に臨むわけではありません。過去については、リスペクトはしますが、全く別の選手、別の監督がやっているわけです。そういう意味ではすべての国について、自分たちに有利になるスカウティング・分析をして、どういう国が脅威になるかというデータを集めないといけません。
ただ、まずは女子フットサル日本代表としてのプレーモデルを、どれだけ大会までに落とし込めるかが重要です。大会を優勝するということは、当然、最終日のファイナルまで行くわけです。大会を通じてプレーモデルを積み重ねて、効果的に発揮する。そこが一番大事だと思っているので、ライバルのことを考えるよりも、自分とスタッフと選手が非常に高い意識、同じビジョンを持って、1セッション、1セッション、最大限の効果をあげる。相手のことよりも、まずはそこが一番大事になってくるかなと思っています。

――AFCに出場する各国に対するスカウティング状況は?
木暮 スカウティングをし出したら、限りがありません。現状、足りているか、足りていないかでいうと、もっともっと集めないといけません。直近のインドア・ゲームズを振り返ったり、日本と同じグループの中国代表は日本遠征に来ていました。クラブチームと行った親善試合はすべて視察しています。引き続きいろいろな関係者と接触して、現地に行ってからもスカウティングなどの対策を行っていく必要はあると思います。
ただ、先ほどの質問での答えと同じですが、そこ以上に大事なのが、今、この14名のポテンシャルをどう引き出すか。そしてプレーモデルをどう理解してもらうか。これらはスカウティング以上に大事なことだと思っています。用意しているプレーモデルは、すべてアジアのこの大会を勝ち抜くために用意しているつもりです。それを1秒でも早く習得して、プラスゲームの中で効果的に使えるようにする。そしてスカウティングでさらなる効率化、効果をあげていくことは、当然、現地に行ってからも続けていくことかなと思います。

――2016、17年、女子代表はアジアでの戦いはありましたが、世界での活動はありませんでした。木暮監督が目指すプレーモデルは、世界での活動でも同じように展開していく予定ですか?
木暮 もちろんプレーモデルなので『ここまでしか通じない』というものをつくりあげているわけではありません。ブラジル代表と対戦しても、同じプレーモデルを用いてやる準備はします。当然、チーム力とか、タレントによって細かいところは変わると思いますが、自分が考えているプレーモデルとか、自分たちから自ら数的優位をつくり出すフットサルをするんだというのは、どこが相手でも考え方は一緒です。

――女子アジア選手権が終わってから、6月2日、3日に2シーズン目を迎える女子Fリーグが開幕します。女子アジア選手権の結果によっては、リーグ戦の集客にも影響が出てくると思います。代表とリーグのつながりについては、どのように考えていますか。
木暮 こういう全国リーグができて、年数を重ねていくことは、女子のレベルアップにつながると思います。これは女子に限らず、自国の持っている国内リーグのレベルが上がればあがるほど、良い選手、良い競争力を持った選手が現れます。その中で選ばれた選手が代表だと思っています。もちろん男子のように毎日練習ができてとか、各クラブに監督がいてとか、フィジカルコーチがいてというのは難しいでしょう。しかし全国リーグの中で、ホームとかアウェーとか、そういったものを争った経験は女子代表のレベルアップにつながると思います。
今回の選手たちの所属チームを見てもらえばわかるように、全選手が女子Fリーグクラブ所属というわけではありません。自分自身もFリーグが開幕する前は地域リーグしかなくて、代表には関東リーグとか東京都リーグから選手が選ばれていました。その後、Fリーグができて、選手も少しずつFリーグに集まるようになっていきました。そして気づけば男子の代表に招集される選手はFリーグの選手か、海外の選手です。今回、女子代表には海外から一人呼んでいますが、それが正常だと思いますし、そういう流れに女子フットサル界もなっていくでしょうし、そうなっていく方向付けをするために今回の女子代表の結果とその後に開幕する女子Fリーグはリンクしていると思っています。自分自身も女子Fリーグを積極的に視察しようと思っています。
ただ、女子Fリーグに参戦できるかは選手個々の環境によって左右されます。まだまだ女子Fリーグにいなくても、地域で頑張っている才能ある選手、地域に埋もれている才能はあると認識しています。Fリーグと地域リーグの両方を同時進行でしっかりチェックして、日本代表が魅力あるチームでないといけないと思っています。
その魅力というのは、タイトルを獲ること、良いフットサルをすること。その2つしかありません。自分ができるのは、その2つをまずこの2018年で見せること。そして、それをきっかけに『うまくなりたい』と思う選手がもっと出てきたり、もしかしたら『女子Fリーグのクラブに入りたい』と思う選手が出てくるかもしれません。そういう結果を受けて『女子のフットサルも面白いんだ』と思って、会場に足を運んでくれるファンが増えるでしょう。そうすると良いサイクルに入っていくのではないでしょうか。そういう意味でも代表とリーグの関係性は、非常に重要だと認識しています。

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