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【AFCクラブ選手権2017】アジアの舞台に戻った木暮監督の下、大阪が見せたFリーグとは違う顔

 

アジアの大会を取材すると、顔なじみの関係者や記者に決まって聞かれる質問があった。

「おい、いま、ケンイチロウ・コグレは何をしているんだ?」
木暮賢一郎は、日本代表のエースとして長年にわたって君臨し、8回出場したAFCフットサル選手権では日本代表を2度の優勝に導き、個人でも2度のMVPと1度の得点王という結果を残した。W杯にも3度出場している。

イランのバヒド・シャムサイーと木暮は、アジア・フットサルの象徴的存在だ。だが、昨シーズンまで監督兼現役選手としてAFCクラブ選手権に出場していたシャムサイーに対し、現役引退以降の木暮はアジアの舞台から姿を消していた。木暮がアジアの舞台から消えてから、徐々に日本代表の成績が下降していることも、アジアの関係者には強いカリスマ性を感じさせているようだ。

そんな木暮が、Fリーグ2016/2017を制したシュライカー大阪の監督として、アジアの舞台に戻ってきた。AFCクラブ選手権2017が開催されるベトナム・ホーチミンのプートースタジアムは、木暮を擁する日本代表がイラン代表から歴史的な初勝利を挙げた縁起の良い場所でもある。

20日の深圳との初戦。会場入りした木暮はピリピリしていた。ミックスゾーンで地元メディアからの取材を受けている間も、ほとんど表情は変わらなかった。それでも一度、ロッカールームへ入ってから再び会場のエントランス付近にあるミックスゾーンに姿を現したときは、多少、リラックスした様子だった。

久しぶりのアジアの舞台に、木暮が燃えないわけがない。

ただし、今大会に臨むにあたって、大阪は予選通過がどうなるか危ういとさえ言われていた。優勝候補の一角であるイランのサナイェ・ギティ・パサン、今大会に向けて外国籍選手を補強した中国の深圳南嶺鉄狼と、同組になったこともその要因だ。だが、それ以上に不安視されていたのは、外国人は外国籍1枠とアジア枠1名という大会のレギュレーションによって、ヴィニシウス、チアゴという2人のブラジル人選手を使えないことだった。

2016/2017シーズン、大阪がFリーグ初優勝を成し遂げる原動力となったのは、その攻撃力だ。リーグ戦34試合を戦い、186ゴールを記録。1試合平均5.47得点という驚異的な得点力を示してAFCフットサルクラブ選手権の出場権を獲得した。

攻撃面でリーグのシーズン最多得点記録を塗り替えた一方、守備では93失点を喫している。これはリーグ5位の成績であり、プレーオフ進出チームの中では最多失点を喫していた。今シーズンのリーグ戦でも、ゴール数ではリーグ2位の30得点を挙げているが、失点はリーグワースト5位タイと、攻撃重視の傾向はそれほど変わっていない。

はたして、昨シーズンのレギュラーシーズンだけで計80ゴールを記録した2人を欠き、大阪は機能するのか。初戦の深圳との試合で、木暮監督の率いる大阪は、その答えをしっかりと示した。

ヴィニシウス、チアゴが不在のピヴォには、今季加入したFP相井忍とFP芝野創太が起用される。ヴィニシウスやチアゴほど圧倒的にボールが収まるわけではない。それでも機動力のある彼らは、ボールを保持している相手に執拗にプレッシャーをかけて、自由にプレーをさせなかった。大阪が初戦を5-1と快勝できたのは、GK柿原聡一郎の好セーブもあったが、後方からのビルドアップを容易にさせなかった彼らのハードワークもその一因だろう。

試合後、この2人を獲得した理由について、あらためて木暮監督に尋ねると、「彼らを獲得した背景として、彼らの持っているポテンシャル、リーグ戦、AFCを含めて、僕の目指しているところに必要なタイプの選手でした」と説明した。そして、かつてピヴォの選手として活躍した指揮官は、「持っているものを、自信を持って見せてほしい。日本とはマークの付き方も違いますし、彼らのことを相手が知らないぶん、彼らの良いところが出るかなとは思っていました」と、2アシストの相井、1得点の芝野と、ともに結果も出した2人のパフォーマンスを評価した。

実際、チアゴ、ヴィニシウスが不在の大阪は、Fリーグで見せている顔とは異なる顔をこの試合で見せた。ボールを保持するよりも、相手にボールを保持させておき、奪ってからのカウンターを狙う。しかも、ゴール前に必ず複数の選手が走りこむように徹底されている。相井を筆頭に前線からプレスをかけてボールを奪えたこと、そこからの切り替えの早さは、初戦をモノにできた大きな要因だ。

「日本では、僕らはポゼッションで相手を上回る。僕らが攻めて、相手が守るという構図がありますが、アジアでは必ずしも僕らが常にイニシアチブをとるとか、Fリーグでやっているような状態になるとは限りません。そうなると、ほかのFリーグのチームが大阪に対してやってくることを、今度は僕らがやらないといけない大会になる、そういう話はしていたんです」と、木暮監督は幅のある戦い方を見せたチームについて語った。

アルトゥールと13人の日本人選手で臨む今大会、大阪が勝ち進むためには、この戦い方を継続できるかがカギになるだろう。アジアを知り尽くす木暮監督は、その点についても前向きだ。

「日本人のメンタルというところでは、そういうところが備わっていると思います。Fリーグを含めて、いろいろな歴史の中で、アジアの勝ち方はそれに近いものが、どの年代でもあったと思うんです。まずは良いディフェンスをすること。そこがソリッドになれるか。他の国は、そういうところがやりきれない。攻めるのは好きだけど、そういう守備で一丸になってとか、勝つために徹するのが苦手な国が多い。でも、日本の良さはそういうところだと思うし、それを出すことが大事だという話はしてきました。割り切ってしまえば、そういう日本のストロングポイントは発揮しやすい状況です」

初戦に勝利した木暮監督が次に見据えているのは、決勝ラウンド1回戦だ。初戦ではFP堀米将太とFPアルトゥールが負傷。第2戦となるサナイェ戦では、若手に多くのチャンスが与えられる見込みだ。

「次の試合、勝ち抜けが決まっていれば、若手にも出番がありそうですね」。そう話を向けると指揮官は、何度かうなずいた。

「若い選手もたくさん来ています。当然、シュライカー大阪として勝つためにというのは大前提としてありますが、クラブとしてとか、日本の未来ということを考えれば、アジアナンバーワンのイランのチームを相手に彼らが経験を積むチャンスが、今日勝利したことで間違いなく増えました。クラブとしても、日本人の選手一人ひとりとしても、そうした経験をできるのは、この大会に来れたこそのメリットだと思います。それは考えないといけないことですし、この大会に勝ち抜くためのプランニングと、若い選手の将来、クラブの未来を含めて、考えることができる、考えやすくなったゲームでした」

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今大会、ここまで冒頭の質問は誰にもされていない。アジアの舞台で再び存在感を放ち始めている木暮監督の下、大阪はどこまで勝ち進むことができるか。

 

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