インタビュー

【インタビュー】浦安の狂犬は、なぜ退団を決断したのか 日本代表FP星翔太「自分の欲求に一回従ってもいいんじゃないか」

2018/2019シーズンの開幕を前に、多くの選手たちが移籍をしている。その中で、最大級の衝撃をもったのが、「浦安の狂犬」こと日本代表FP星翔太のバルドラール浦安退団の一報だろう。チームのキャプテンであり、クラブの顔的な存在は、なぜ7シーズンという月日を過ごしたクラブを離れる決断を下したのか。

以下、星翔太選手インタビュー

――浦安から出たリリースを見たときに、星選手は自らの意思で退団したことが伝わりました。なぜ、そして、いつその決断をしたのでしょうか。
星 自分が成長したいというのが一番の欲求です。それを考えたとき、浦安でやっていく自分にどういう将来を描けるのかを考えました。浦安に残っていたら残っていたで、いろいろなイメージが描けます。未来も少し見える部分もありましたし、若い選手も増えて、彼らに与えていくものもできると思います。一番心地よくできるでしょう。自分がトップにいる変わらない環境でいるのは、すごく幸せだと思います。その一方で、アジア選手権を戦い、イランに勝ちたい。自分の中でもっと難しい感覚を得るかなと思ったら、意外に近いなということをあらためて感じました。だったら、ここはやっぱり自分自身を磨き上げないといけない。それが重要だなと思いました。そう考えたときに心地いいところだと、伸び切らないところは絶対にありますし、練習のセッション数も増やさないといけない。(浦安では)週に3、4回の練習だったのに対して、海外のクラブの選手などは週に7回から10回はトレーニングしています。そういう環境に身を置かないと、ボールを蹴る回数を増やさないと、成長は難しいのではないかと考えて、今、浦安を出ていくのが一番良いのではないかと考えたのが一番です。

――選手はもちろん試合でも大きく成長しますが、回数で言えば試合より練習の方が多くあります。浦安ではトップでできるという話でしたが、その練習でどれだけうまい相手とできるかは重要でしょう。かつて浦安に日本代表が集まっていたときを知る選手にとっては、物足りない環境になりつつあるのかなという気もしました。
星 僕の場合、若い選手に対して常に言い続けるタイプなので、成長を促すことというか、 気づいてほしいことや「こうした方がいいよ」という話は、常に伝え続けていました。それはこれからも変わらないなと思っていました。だけど、本当にアジア選手権を戦ったときに、若手に伝えることも大事だと思うのですが、果たして自分自身がどうしていきたいか。そう考えたとき、やっぱり伝えることを度外視して、もっと高い欲求が出てきてしまいました。成長することは浦安でもできることなのかもしれませんが、練習の回数を増やすことはもちろん、チームメイトがたとえば全員スペイン代表だったらとか、日本代表選手だったりしたら、レベルが上がる可能性は高くなります。それこそ日常にヒントが込められていると思います。環境が変わらないと、人は変わらないと僕は思っているので、そうした部分で照らし合わせた部分で、一回、自分の欲求に従ってみることがいいのかなと。浦安に対して愛着はもちろんありますし、浦安で現役を終えるつもりでした。でも、『自分の欲求に一回従ってもいいんじゃないか?』というのが、この年齢になって出てきてしまいました。それに従ってみようと素直に思ったので、やめようと決断しました。

――そうなると次に興味を持つのが、どこに行くかです。今の話を聞いたところ、選ぶ環境というのは、しっかり毎日練習できるクラブになりますね。
星 そうですね。そこありきかなと思います。練習の環境、あとはクラブのビジョンはすごく大事にしたい部分です。自分が良くなりたいというのと、クラブのためになる。それが両立できるクラブに行きたいなと思っています。『浦安で良くなりたいけど、良くなれないから出ていった』『浦安のビジョンが見えないから出て行った』と思われるのは、すごくイヤなんです。浦安には浦安の良さ、ビジョンがあります。その反面、自分が浦安に与えられるものが、5、6シーズン過ごしたことで、限界に来たのではないかという思いもありました。そうしたことと、あらためて自分を高めることを考えると、海外を含めて考えないといけないと思っています。海外に行けば極端に言うと自分のことだけを考えればいいでしょうが、それは自己満足であったりします。国内でプレーするなら自己満足で終わらせることはできませんし、フットサル業界全体を大きくすること、より良くすることも考えないといけません。そのときに上の世代に食らいつく下の世代をつくっていく。それも大事だと思っているので、そうしたビジョンのあるクラブでやりたいなと思っています。

――これは僕個人の希望ですが、日本代表で得られる経験は、Fリーグで得られるものと違います。今回のチャイニーズタイペイに行った国際試合の経験がある選手たちには、できるだけ自分で海外でプレーする機会を得て、更なる国際経験を積んでほしい。日本代表には、まだ国際経験が浅く、自分ではその道を切り開けない選手、国際経験を積むことでいろいろな気づきがある選手を入れて、ある程度、成長できる下地をつかんでほしいと思っています。その意味で星選手にも海外移籍を期待したいのですが、会社も始められましたよね? 日本を離れるのは難しいのではありませんか?
星 そこに関しては、僕はアスリートですし、環境を良くしていくことが必要だと思っています。いち選手だけでいることが重要だとは思っていませんし、自分で決めた道で、人にはできないこと、自分にしかできないことをつくっていきたい想いが強くあります。「会社をやっているから国内の地方のチームに行けません」とは言いたくありません。同様に海外についても、「会社をやっているから選択肢にありません」ということはありません。自分が目指すべき姿に、最も近づける道を考えて、進んでいきたいと思っています。

――過去に名古屋オーシャンズや木暮賢一郎監督時代のシュライカー大阪などから、オファーがあったという噂は聞きます。ぶっちゃけた話、ここ近年、他クラブからのオファーってどれくらいあったのでしょうか?
星 正直なところ、話をしたことがないのでわからないんですよね。たしかにスペインから帰ってきたタイミングなんかではありましたが、それ以降は浦安を出ていく考えがなかったので、全然、話を聞いていませんでした。もしかしたら、僕のところに入ってこなかった部分もあったかもしれませんが。でも、そういった部分を含めて、一回やめないと、いろいろなところがフラットにならないと思いました。そもそも僕の場合、『浦安を出る』なんて思われていなかったじゃないですか? 僕自身も出ると思っていなかったくらいですから。

――逆に言うと、その考えが変わるくらい、今回のアジア選手権の経験は大きかったんですね。
星 はい。2017/2018シーズンは、高橋健介監督と一緒に仕事をして、新しく見えた部分ってすごくあって、それは自分のバリエーションがすごく増えましたし、それがアジアでやったときに通じるものがありました。自分自身が2年後の代表に関わっていくにあたって、それは選手としてなのか、選手として目指しながら後進を育てていくことも考えるのであれば、やっぱり国内じゃないといけない。その考え方で、決断は変わってくるなと思っています。選手を目指すならスペインでいいだろうし、後進を育てるなら国内じゃないといけない。代表を目指したい、業界を発展させたいと強く思っているクラブとやるのも、一つ重要じゃないかなと思っています。

――今話に出た高橋健介監督。また、長く一緒にやっていた荒牧太郎選手。彼らがいなくなることも、今回の決断を後押しした部分はありますか?
星 後押しというよりは、決断するより前にそういう話を聞いていたので、要因の一つにはなったと思います。ただ、何度も言うように自分自身のうまくなりたい、成長したいという欲求が一番の理由であることは変わりません。

――前回のW杯予選で負けたときというのは、4年後に自分が出るイメージって、なかなか持てなかったと思います。いま、あれから2年が経ち、次のアジア選手権はW杯予選を兼ねたものになりました。近づいたことで、少し自分が出るイメージはつかめてきましたか?
星 2年後があるというのは、全然ないですね。今回のアジア選手権も呼ばれるとは思っていませんでした。やっていく中で呼ばれたから、ただひたむきに頑張っていくというか。クラブの成績で考えたら、今回は呼ばれることがありえなかったので。クラブの成績ありきだと思っているので。だから、その部分で代表に呼ばれているのは、嬉しい部分もありましたが、クラブで結果を出せていなかったので恥ずかしい部分もありました。だから、今来たものに対して真摯に向き合っていくのが、今回のアジア選手権でしたし、それができたからこそ、良いプレーができたのかなと思います。2年後ももちろんピッチに立ちたい欲求はありますが、そこが確約されているわけではないから。

――「確約されているわけではないからこそ、よりそこを目指せる場所に」というチャレンジ精神、「もっとフットサル業界を発展させたい」。どちらが強いのでしょうか。
星 両方ですね。そこはまだ自分が決められない部分でもあります。選手として追い求めていくことに集中したい思いと、もう一つ業界に対して下の子たちをより良くするために、ピッチにいた方が助けられるんじゃないか、みたいな。

――個人が選手としてチャレンジできる期間は有限ですが、業界全体の若手育成は永遠の話です。そう考えると、今しかできない『選手としてのチャレンジ』を選択するのが必然かなと思うのですが、そこに集中できずに育成のことも考える背景には、今の業界に対する危機感が強いのですか?
星 最善を尽くしたいという感じですね。できることを、全部やっていきたい。引退してからだと、言えることって限られてしまいますからね。あとは、引退後に指導者として若い選手たちにアプローチをしていくイメージがないから、選手のうちにやれることを最大限にやろうと考えているのかもしれません。それでいえば、おっしゃるようにスペインとか、イランとか、ポルトガル、イタリアのクラブでプレーして、第一線を味わって、日本代表に帰ってきたときに還元するというのは、全然できる可能性はありますよね。そこは、自分の欲求を洗い出していて、本当に選手としてだけでいいのか。自分の思っていることを伝えられる環境でやるべきなのか。自分自身でも決めきれていないからこそ、一回、フラットにしたいなと思っていました。

――浦安だとキャプテンというイメージも強かったから、そうしたものをすべて取り払い、一人のフットサル選手として、自分がどうしていきたいかを考えていると。
星 そうですね。自分がどうありたいかです。どうありたいか、という自分の像をずっとつくってきましたが、浦安と一緒にやっていく中で混じってきたものを取り除いて、あらためて自分に何ができるかな、何をしたいかなという欲求を整理しています。とにかく一度やめないと、それを整理できないのがあったので、やめようと決断しました。

――アジア選手権が終わり、全日本選手権までの間に発表しましたが、発表できるタイミングとしては最短でしたね。
星 決めたからには、なるべく早く発表した方が良いかなと思いました。自分自身にとってもそうですが、チームやファン・サポーターに隠して戦うのも嫌だったので。

――チームメイトにはいつ伝えたのですか?
星 ファン感謝デーのときです。選手たちには衝撃もあったと思うのですが、その後に練習があったので。練習前に言って、練習に集中できないのはイヤだったので。時間があって、ファンと触れ合える楽しさがあり、それを考えることが忘れられる環境でやって、時間を経て、フレッシュに練習に臨んでほしかったので。

――浦安ではタイトルを獲れませんでした。
星 やってきたことの証明としては、タイトルを獲りたかったです。それを獲れなかったことも、自分の中で転換期になりました。

――名古屋の選手たちと2016/2017シーズンの大阪の選手たち以外は、リーグタイトルを獲った選手というのはいませんからね。
星 でも、僕はそこではないですね。自分が成長したい気持ちの方が強いです。タイトルは後から付いてくると思っているので。浦安でもタイトルを付いてこさせるつもりだったのですが……。それができなかったのは自分のせいですね。

――海外なのか、国内なのか。次の発表を楽しみにしています。
星 はい。待っていてください!

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