コラム

【ビバ!フットボール・サラ】第12回 欧州で何が起こっているのか? アルゼンチンの優勝で何が変わった?

コロンビアで開催された2016年ワールドカップは、このスポーツの歴史において、「エポックメイキング」だった。優勝したのはアルゼンチンで、ファイナリストはロシアだった。3位はアジア王者に返り咲いたイランで、イランにPK戦で敗れたポルトガルは4位だった。過去7大会でタイトルを独占していたブラジルとスペインの2大国は、大会の全日程が終わる前に帰国した。

これまでブラジルとスペインは過去7大会のW杯のうち、決勝戦で5回対峙し、決勝で対戦しなくとも、それは「事実上の決勝」と呼ばれた。チャイニーズ・タイペイで行われた2004年ワールドカップが顕著な例だ。両者は準決勝で当たり、PK戦でブラジルが劇的に敗れた。そのゲームは、クオリティも迫力も他を圧倒した。2008年、2012年の決勝でも、やはり2大国の対戦となると別次元だった。4年ごとに2大国は「随分遠くにいるな」と改めて感嘆する。それが近年のワールドカップのルーティンだった。ところが、コロンビアでは、優勝5回のブラジルは決勝トーナメント1回戦でイランに破れ、姿を消した。優勝2回のスペインも、王国に追随するように準々決勝でロシアの前になす術なく敗れた。

アルゼンチンが、史上3カ国目の世界王者となった。ディエゴ・グストゥシィ監督の情熱と綿密なプランを土台に、欧州で活躍する選手たちがそれぞれのタスクをきっちりこなしていた。強固なディフェンスは見事で、堅守から手数の少ない縦に速い攻撃も鮮やかだった。セットプレーも実に洗練されていた。選手、テクニカルスタッフと文字どおりチーム一丸となって勝ち取ったタイトルだった。

あれから1年半が経過したが、アルゼンチンの優勝と共にフットサルの勢力図は変わったのだろうか。

各国代表の意識は明らかに変わった。

ブラジル代表ピヴォ、フェラオ。持ち前の強靭なフィジカルを全面に押し出し、得点を量産するストライカー

どの国もブラジル、スペインへの恐れは軽減した。2018年2月にスロベニアで開催された欧州選手権で、スペインが本大会初出場のフランスと引き分け、決勝というタイトルマッチでポルトガルに負けたのは、代表的な事例だ。ブラジルも2017年南米選手権決勝で延長の末、アルゼンチンに何とか勝利した。アルゼンチンがホームで大きな後押しがあったとはいえ、アルゼンチンもブラジルに安々と負けることはなく、ディティールが勝敗を左右するゲームだった。アルゼンチンは栄冠後も、そのタイトルにふさわしい尊敬と尊厳を示している。

このように代表の勢力図は、確実に変わった。

その一方で、クラブレベルに目を向けるとその変化が目に見て取れるまでには至っていない。

UEFAフットサルカップ準決勝で対戦するスペインのインテルとバルセロナの2チームの陣容は、スペイン人とブラジル人で占められている。リカルジーニョが欠場したコパ・デル・レイ準決勝では、ゴレイロがスペイン人で、コート上のフィールドプレーヤー8人はブラジル人だった。約12年前、スペインがバブルだった時は、各チームの金庫は潤っていたので、毎試合見られた光景だった。若手が育ってもトップチームでは活躍する場がないと下部組織のスペイン人指導者たちがシリアスにその将来を案じていた時代だ。今となっては懐かしい。

コートをブラジル人だけが埋めるなんて、今ではインテル、バルセロナ、エルポソのように“持てる者”同士の対戦でしか見られない。そしていまだにクラブレベルでは、頂上決戦にはアルゼンチン人やロシア人、もしくはイラン人選手がいない。ポルトガル人にしても世界でも稀有な才能を持ったリカルジーニョくらいだ。生活習慣、経済面など一概にクラブと代表を単純に比較することはできないが、クラブレベルにおいてはコロンビアでのワールドカップの影響を感じることは少ない。

今後も不変なのは、フットサルにおけるブラジル人の需要だ。

フットサルも他のスポーツ同様に、各選手の運動能力が近年、目に見えて向上した。アスリートとしての能力が単純に数年前に比べて高い。特に持久力だ。ほとんどのチームが選手の肺と筋肉が耐えられるので、マンマークをディフェンス戦術の基軸に置いている。当然ながら、ハイプレスを仕掛ける位置においてマークを受け渡すこともあるが、ライバルチームが自分たちの陣地でパスを回している時に、ディフェンスがマークを受け渡すシーンは久しくお目にかかっていない。ゾーンディフェンスは、マークを受け渡すことで、体力の消耗は軽減できるが、マンマークと比較すると相手アタッカーを一瞬でもフリーにしてしまい、また2人の選手が1人の選手を同時に見てしまうというミスも起こりやすい。リスクは高い。対してマンマークはミスが起こるリスクは低いが、相手の後をつけていくので、体力の消耗は激しい。だが、現代の選手は運動能力が向上したので、マンマークに耐えられる。マンマークを指揮官が選択するのは、現代において当然の帰結だ。

バルセロナのエース、ブラジル代表ディエゴ。マークが主流の現代において、彼のように1人で局面を変えられるドリブラーはキーマンとなっていくだろう

そんな現代だからこそ、改めて重要度を増すのが、個の力だ。具体的に言えば、1対1の突破力だ。マンマーク全盛の今において、もし1対1で突破できれば、数的優位となり、決定機を手にできる。昨シーズン、バルセロナは世界最高のドリブラーであるブラジル代表ディエゴがボールを持てば、スタンドは期待で腰を浮かせた。彼があまりにも1対1でディフェンスを抜き去り、決定機を演出したからだ。このディエゴに代表されるように、1対1で勝てる選手はほんの数年前と比較しても重要度を増している。そしてブラジル人は大概にして、1対1が得意。インテルのマルチプレーヤー、ブラジル代表ラファエル、ガディア、ダニエル・シライシも正面から1対1を仕掛けることができるスキルがある。

マンマークをいかに攻略するか。

20日から開幕するUEFAカップの見所のひとつであり、現代フットサルにおいて、議論されるべきテーマだ。

ディフェンスの戦術は、行き着いた。

時代のサイクルは、攻撃へと移っていく。

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インテルはパスを回し、相手ディフェンスの背後を奪おうと習慣化されたコンビネーションを繰り返すだろう。バルセロナはディエゴのドリブル突破、フェラオのピヴォ当てを中心に攻略しようとするだろう。スポルティング・リスボンは2人のピヴォを中心に攻撃を仕掛けるだろう。ハンガリーのジェールは、堅守からの速攻に好機を見出そうとするだろう。そして、そんな各チームの攻撃に、次の時代に主流となるであろう戦術が垣間見られるだろう。

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